働き方改革とレオ・バーネット
- ALPHA SIRIUS
- 2019年6月3日
- 読了時間: 3分

「働き方改革」という言葉を聞くたび、レオ・バーネットというアドマンを思い出します。
レオ・バーネット(Leo Burnett、1891年-1971年)とは、かんたん言えば、アメリカの広告界の巨匠です。バーネットさんは、レオ・バーネット社の社長をやめて会長職に退くときに、有名なスピーチを残しています。その題目は、「私の名前をドアからはずすとき」。自分の名前をドアからはずすとき、ということは、「こんな会社はレオ・バーネット社じゃない」と思ったとき、ということです。
以下、内容を割愛してお届けします。
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私の名前をドアからはずすとき
When to Take My Name off the Door.
いつの日か私がここを去った後、
君たちか君たちの後継者は、
私の名前をドアからはずしたくなるかもしれない。
だが、私のほうから
『どうしても私の名前をドアからはずせ』
と、要求するときはどういうときなのかを話しておきたい。
それは、君たちが広告をつくるために費やす時間より、
金儲けに費やす時間が多くなったときとか
広告をつくるという純粋な楽しさや心のたかぶりというものが、
お金と同じようにとても大切なんだということを忘れたときとか
懸命に素晴らしい仕事をしようとすることより、
会社を大きくすることが第一の関心事になったときとか
謙虚さを失い、なんでも知っているというような
大物のふりをし始めたときとか
イキイキとした強いアイディアをつくるのをやめて、
ルーティーンの流れ作業に走りはじめたときとか
最後にたった一人でタイプライターを叩いていたり、
デザイン・ボードに向かっていたり、
カメラを構えていたり、
ブラック・ペンシルで何かを書きつけていたり、
夜遅くまでメディア・プランをつくっていたりする、
我々のエージェンシーの今日をつくり上げてきた、
そうした孤独な人たちへの、深い感謝を忘れたときとか
努力してきた人だからこそ、例え一瞬であろうとも、
熱くて手が届きそうにもない星を
実際につかめたんだ、ということを忘れたとき
そんなときにこそ、私は君たちに
私の名前をドアからはずすよう強く求める
たとえ死んだ後でも、私はあの世から甦ってきて、
夜中にオフィスの全てのドアから私の名前を削り取ってやる
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1930年代。90年前の広告業界は、こんな感じだったんですね。でも、90年後のいまも、デザイナーという人種の本質は変わらないと思います。夜遅くまで「ロゴの位置がどうだ」「文字間がどうだ」「そもそもこのアイデアはどうなんだ」と、やってしまうのが、デザイナーというものです。いまの働き方改革の流れのなかでは、評価されにくい生き方です。
それでも、私たちは、デザイナーの会社です。世の中にデザイナーといういきものを理解してもらい、デザイナーが生きやすい環境を整えなければならんぞ、と考えています。生産性とクリエイティビティは共存させられるのか。その人の働き方が、その人の生き方になっている場合もある。そういう人間は、フリーランスになるしか道はないのか。働き方改革のなかで、デザイン会社はどこを変えていき、どこを変えないでおくべきか。さて、どうしたものか。
すぐに答えは出ないので、とりあえず、今日は早く帰ろうと思います。
When to Take My Name off the Door.
https://vimeo.com/29723817



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